INTERVIEW 2017.03.07

映画『愚行録』 妻夫木聡インタビュー(インタビュー)

FLYING POSTMAN PRESS札幌版のインタビューを全文公開

人間は「儚い生き物」。妻夫木聡があぶり出す人間の愚かさ・・・。

■リード

一家惨殺事件の真相を追う週刊誌記者・田中武志(妻夫木聡)と、育児放棄の容疑で逮捕された妹・光子(満島ひかり)。不穏な空気を漂わせる兄妹のはざまで、人間のおぞましい嫉妬、羨望、見栄、駆け引きが悪夢のように連鎖していく。映画『愚行録』は人気作家・貫井徳郎の小説を新鋭・石川慶監督が映像化した群像ミステリー。難役に挑んだ妻夫木と満島が、苦労しながらも深い信頼関係で取り組んだ撮影を振り返った。

■本文

Q:原作、または脚本を読んだときの感想はいかがでしたか?

妻夫木聡(以下、妻夫木):僕が演じた田中は、原作ではフィーチャーされているわけではない。でも、ストーリーテラーとしてとても重要な役割を担っている。そこのバランスが特に難しかったですね。

満島ひかり(以下、満島):映画への参加が決まってから貫井さんの小説を読みました。あまり現実的だとは思わなくて、ファンタジーのようでした。もしかすると、現実っぽいから、現実離れしているように感じたんでしょうか……?

Q:これを映像化すると聞いて、どんな作品になると思いましたか?

妻夫木:芝居をしてお客さんに何かを見せるという感覚が、どちらかというとない方がいい作品になると思いました。僕らの生活がちょっとのぞかれているという感覚、そういう意味合いでお客さんに観てもらうことが一番重要なことなのかなと。

満島:映画にしたら大変なことがいっぱいあるだろうなって思いました。プロデューサーさんや石川監督とお話したときも、どういう意図でこれを映画にしようと思ったのか、根掘り葉掘り聞きました(笑)。原作が水面をピョンピョン歩いていくような作品なので。さっきまであったことが、振り返るともうなくなっている。そんな話の連鎖をどうやって映像にするのか想像もつかなかったんです。

Q:実際に完成した作品をご覧になっていかがでしたか?

妻夫木:どちらかというと、映画って主観的になる作品が多いと思うんですけど、今回はすごく客観的な作品。ドキュメンタリータッチなにおいも醸し出している。みんながみんなさらけ出さない中で、こういうふうに思っているんじゃないか? っていうことを常にお客さんに想像させるところが、この作品の重要なポイントでもありますね。

満島:予想していたよりもずっと美しい作品でした。説明っぽくないし、明るくも暗くもない、カラッとしたところが好みでした。例えるなら、良くも悪くもない朝のような映画だなあ、と。

Q:妻夫木さんは、一家惨殺事件に執着する週刊誌記者・田中をどのように演じようと思ったのでしょう。

妻夫木:今回は、ある新聞社さんにお邪魔して、いろいろなところを見せていただき、実際に記者の方にも取材させていただきました。田中は映画の中で重要な役ではあるので、印象はある程度残さなきゃいけない。でも、あまり印象を残し過ぎてもよくない。キャラとしてはっきりと成り立たない方がいいんだろうな、というのはありましたね。だから、もしかしたら多面的に見えてもいいのかなと。はっきりと田中を見せる、ということよりも、そこに“いる”ということを特に重要視しました。「存在」しているけれど「存在」を消す、ということの方が大切だったのかなと思いました。

Q:妻夫木さんがインタビュアーになる某ビール会社のCMも役に立ったんじゃないでしょうか。

妻夫木:そうですね(笑)。人と接して何かを聞き出す、という点では、あのCMも役には立っていますね。でも、今回は事件記者なので、もう少し考える部分はありましたね。すごく細かいことですが、例えばボイスレコーダーを回したり、メモを突然取り出したり、書くのをやめたり、そもそも書く動作もしなかったり、そういうところも対面する相手によって振り分けたりとかしていましたね。聞く人によってどういう立ち位置であるかとか、どういう自分でいるべきか、ということは意識していました。

Q:満島さんが演じた光子もいろいろなことを内包しながら、それでいて無邪気なところもある複雑な役でしたね。

満島:たぶん光子は、子供のころからのクセで、本当のことに気が付かないように生きてきたんだと想像しました。地に足を着けたことがないのかな、という印象を受けたので。何かを伝えたくてしゃべっているのか、ただ何となくしゃべっているのか、何をどこまで出せばいいのか、そのサジ加減をよく監督と話していました。光子にわたしをつかまれないように、わたしが光子をつかまないように、何かを表現しないようにとか、そんなふうにやっていました。

■作品紹介
「乱反射」「後悔と真実の色」などで知られる人気小説家、貫井徳郎の直木賞候補作を実写化したミステリー。未解決の一家殺人事件を取材する雑誌記者が、その思わぬ真相にたどり着く姿を追う。メガホンを取るのは、短編を中心に手掛けてきた石川慶。『悪人』で共演した妻夫木聡と満島ひかり、『十字架』などの小出恵介、『ランブリングハート』などの臼田あさ美らが顔をそろえる。羨望、嫉妬、駆け引きといった人間を深く見つめた物語に引き込まれる。

■作品画像
同送1種

■コピーライト
© 2017「愚行録」製作委員会

■公開情報
2/16(土)より、札幌シネマフロンティア、ユナイテッド・シネマ札幌、他にて公開

CAMPAIGN

PAGETOP